自身の中学・高校時代に学校が終わってから「塾」に通われていた方も多いのではないでしょうか。
少子化の時代にあって、子ども一人にかける教育費の額は上昇しています。
学習塾の講師はその多くがアルバイトです。時給は高めで生徒と良好な関係が築ければやりがいもありますが、「先生」と呼ばれる仕事である以上、他のアルバイトより厳しい面もあります。
今回は、塾講師の仕事について詳しく見ていきたいと思います。
仕事内容は?
塾講師の仕事内容は以下です。
・授業をする
生徒の年齢は勤務先によって違いますが、小学生~高校生(大学受験)まであります。どの層を対象とした塾なのかは応募の際に分かるので、自分が教えたい年齢層を選べます。
授業形態は個別指導と集団指導があります。
【個別指導】
講師1人に生徒2人が付くのが一般的で、中学生~高校生を対象とした塾に多い形態です。
ブースに仕切られた教室で自分の両脇に生徒を座らせ、交互に教える形です。全く学年の違う生徒を同時に指導する可能性もあります。(極端に言うと中1と高3など)
効率よく、平等に時間配分をしながら教えないといけません。
【集団指導】
多くの人がイメージする「先生」のように、黒板の前に立って授業をします。
小学生対象(中学受験)や中学生(高校受験)対象の塾に多い形態です。
個別指導より難易度は高いです。学年が低いと集中力が切れて騒ぎ出す生徒もいるので、教室にいる全員を
自分の授業に引き付ける話術や授業の工夫が必要です。
授業の質を保つため、アルバイト講師が集団指導に立つ時は研修が手厚く、時給も高めになります。
授業報告書の作成
どの塾も授業後には報告書を作成します。授業内で行った単元・生徒の様子・小テストの結果などを
詳しく記入します。複数の講師が1つの授業を担当することもあるので、引継ぎ資料としてしっかり書いておく必要があります。
分量や書き方はバイト先の形式に従いますが、これが手書きで量も多いとなるとかなり時間を取られて大変です。
20分くらいはかかりますが、この時間は時給が発生しないのが普通です。
テストの採点
授業内で生徒がした小テストや定期的な実力テストの採点を任せられることもあります。
所属校舎によっては生徒の数が多く採点に時間がかかるので、早く・正確にさばいていく必要があります。
(必要に応じて)補助教材の作成
基本、校舎に使用するテキストがありますが、それでは足りない時に自ら担当生徒に合った教材を
作成することもあります。ただ、これは非常に手間がかかる上に正確な問題を作成する能力も求められるので
上級者向けの仕事になります。
職場の雰囲気
雰囲気は配属される校舎によります。
地域によってヤンチャな生徒が多ければ、校舎もにぎやかな(悪く言えばうるさい)空気になりがちです。
そういう校舎には、熱血系や親しみやすい友達のような先生が多く配属されいます。
逆に偏差値の高い学校がある地域で意識の高い生徒が集まる校舎は、ピンと張りつめた空気で勉強に集中できる環境が整っています。
そうした校舎では、授業が上手いカリスマ的な先生の存在感が大きく、講師も指導に熱心です。
ほとんどの場合配属校舎は選べないので、どんな雰囲気の環境で働くことになるかは運次第です。
塾講師のきついところ・楽なところ
きついところ
・とにかく喋らないといけない
世の中の授業形態は「生徒の活動中心」に変わりつつありますが、塾の授業は講師の解説中心です。
分かりやすく、面白く、聞き取りやすく話そうとするとかなりエネルギーを使います。
授業がたくさん入っている日は終わったら疲労感と達成感でいっぱいです。
・講習会の期間は一日中授業で疲れる
夏休みや冬休みなど、学校の長期休暇には「季節講習会」が開かれます。
この期間は生徒が朝から晩まで授業に来ることができるので、講師の稼働時間も長くなります。
忙しい時には1コマ60分~80分の授業を5コマ以上教えることもあります。
その分しっかり稼げますが、一日中喋りっぱなしでクタクタ…なんてこともよくあります。
・授業報告書の作成が多い
授業報告書の作成は最低でも20分ほどかかりますが、普通は時給に含まれません。
出来上がったら塾長(教室長)に見せてOKの許可をもらわないといけませんが、
内容が薄ければ書き直しを命じられることもあります。文章を書くのが苦手な人はつらいかもしれません。
・急な代講が入ると予習が大変
時に急用や病欠で欠勤した講師のピンチヒッターをすることもあります。会ったこともない生徒の授業を
いきなり担当するのは緊張します。また、授業前の予習は必須なので、急いでやることに目を通さなければいけなくなります。
楽なところ
塾講師に楽なところはないです。たくさん稼ぎたいなら、正直他のバイトの方が効率がいいです。
しかし、もともと「勉強が好き」「子どもや中高生と関わるのが好き」という人であれば、天職のように感じられる場面に出会えます。
(生徒の成長を目の当たりにした時、志望校に合格した生徒の笑顔を見た時など…)
実際、教育学部で将来は教員を志望しているという大学生が多く働いています。
日々子どもたちが成長する瞬間を目の当たりにしていると、やりがいを感じてやめられなくなる人もいます。
面接の様子(服装・質問など)
「先生」として子ども達の前に立つので、面接は厳しめです。スーツ着用必須で、身だしなみもビシッと整えて行きましょう。
特に集団授業の講師を希望する場合は、面接中の一挙一動を見て人前に立てそうかどうかチェックされていると思って良いくらいです。
一般的に聞かれる質問は以下の通りです。
- 週にどれくらい入れるか?
- どのくらいの期間勤務するつもりか?
- どの教科を、どのレベルまで教えられるか?(国語と英語は高校受験レベルまで教えられるが、数学は小学生のみ…など)
- 今まで塾で教えた経験はあるか?
- 子ども・中高生時代には何の科目が好きだったか?その理由は?
採用された志望動機
就活の質問のような難しいことは聞かれませんでした。シフトの希望、これまでの経験、指導可能科目など事務的な質問をされたのみです。
ただ、塾講師は「喋り」が命なので、丁寧な言葉で相手の目を見て受け答えができるか、的確にはきはき喋れるかといった第一印象の方を厳しく見られていたように思います。
髪色・髪型・ピアスは?
子どもの教育を仕事とするので、講師もきちんとした格好をすることが求められます。
過度な染髪・私服・ピアス・ネイルNGのところが多いです。(髪色は落ち着いた茶色ならOKです)
真面目で清潔感のある印象を与えないといけないので、塾講師の基本スタイルは以下のようになります。
・スーツ着用
・爪は切る
・髪は上げたりまとめたりして、目や顔にかからないように
・胸元の開いた服は着ない
・ピアス・指輪などのアクセサリーは身に着けない
掛け持ちはできるのか?
競合他社(他の塾)との掛け持ちは禁止されていることが多いです。
生徒の個人情報や授業・教室運営のノウハウが他社に流れることを防ぐためです。
業種が違えば問題なく掛け持ちできます。
居酒屋やカフェなどの飲食系バイトと塾講師を掛け持ちする人もいます。
周りはどんな人が働いていた?
選考が厳しくカタいイメージのあるバイトなので、働いている人も真面目な人が多いです。
勉強は大嫌いだけど時給がいいから塾講してます!という人は少ないです。
一見チャラそうに見える大学生バイトも、実は有名大学の学生で自分の勉強や研究もしっかりしている…という感じです。
将来は保育士や教師になりたい、塾で働きたいなど、本気で教育の道を志している講師が多いのも特徴です。
深夜バイトはどんな感じ?
深夜シフトはありませんが、塾講師の稼働時間は大体が16:00~22:00です。
最後のコマまで授業をして、生徒の質問に答えて、報告書を書き上げて退社するともう23:00近い…
というケースもあります。
シフトはどんな感じ?
自分が担当する生徒やクラスの授業がある曜日は決まっているので、シフトは固定制です。
季節講習会のみ、入れる日を事前に聞かれてシフトが組まれます。
講習会のシフトが決まったら、それに合わせて生徒の時間割も決まるので基本変更はできません。
講師に担当生徒やクラスがつくのが普通なので、よっぽどの事情がない限り、他の講師とのシフトの交換などはできません。
万一、冠婚葬祭や体調不良などで休まなければいけない時は、その授業が別日に振替になります。
私は週3日、3コマほど(18:30~22:00など)入って、季節講習会は一日中 週5くらいガッツリ働いて稼いでいました。
ブラックな点はある?
時間外労働は多いバイトだと思います。
授業前には予習が必須ですが、予習をどこまでやるかは講師次第です。予習は基本的に家でやるので、当然その時間は時給に含まれません。
初めて授業を持つ人で、生徒にいい加減なことを教えるわけにはいかない!と思うと、どれほど予習をしても不安で時間が足りなく感じるでしょう。
とはいえ、それでは時給換算するととんでもなく低い額になってしまいます。
個別授業なら1コマの半分、集団授業なら1コマの8割程度の時間を予習に充てるのが普通です。
仕事に関することは全て時給にならないとおかしい!と考えるタイプの人だと、塾講師はブラックに感じるかもしれません。
時給は?交通費は全額支給される?
塾講師の給料は時給ではなくコマ給で支払われます。
コマ給は個別指導と集団指導で異なります。
個別指導…1000円~1300円
集団指導…1500円~2000円
が平均です。集団指導の方が難易度が上がるので、時給も高く設定されています。
ただ集団授業はエネルギーと事前の入念な予習が求められるので、これでも決して高いとは言えないです。
また高校生を担当できれば、求められる指導力が高くなるので時給も上がります。
交通費は全額支給されますが、授業以外の雑務(教材準備や報告書記入、電話応対など)には手当はつきません。
コマ給で考えたら給料が良さそうでも、予習や雑務などを含めて総合的に考えると時給800円くらいと考えて良いでしょう。
店長はやさしい?怖い?
バイトが従うのは校舎のリーダーです。
(教室長・塾長・校舎長・マネージャー…など呼び方は塾によって違います)
教室長は熱血系の先生が多いです。もともと生徒たちをより良い方向に導こうという意思のある方達なので、
バイトの教育も丁寧で熱心です。私は理不尽な扱いを受けたり、意味もなく怒られたりということはありませんでした。
「当たり前のことをしっかりやる」ことができていれば、きちんと評価してくれる人が多いです。
どんなスキルを学べる?就活に活かせること
【授業内で培われるスキル】
・人に物事を分かりやすく説明するプレゼン能力
何も分からない生徒にイチから勉強を教える中で、「どう説明すれば分かりやすいのか」
「どんな言葉を使えば伝わるのか」「どう話をまとめれば最後まで興味を持って聞いてくれるのか」…など考えることが多くなり、必然的にプレゼン能力が上がります。
・様々なタイプの人と上手く接するコミュニケーション能力
好きな生徒だけ教えられるわけではありません。「この子は話しにくいな」と思う生徒でも信頼を勝ち得て指導していく必要があります。何とか仲良くなろうと試行錯誤しているうちに、
苦手なタイプの人と上手くやっていくコミュニケーション能力が身に付きます。
・予想外のアクシデントに対応する柔軟性
常に生身の人間を相手にするので、マニュアル通りに授業が進まないことはしょっちゅうです。
特に気分の上下が激しい子どもの授業をしていると、ある時は拗ねて授業が成立しない…なんてこともあります。
バイトでも生徒にとっては「先生」ですから、一人の大人として対応しなければいけません。
マニュアルにないことが目の前で起きたら、どう対応するのか自分で考えられるようになります。
【授業外で培われるスキル】
・年上の人と話す時の敬語力
保護者への電話連絡や面談を任される場合もあります。
若い講師であればあるほど、保護者に信頼を持ってもらうためにきちんとした言葉遣い、身のこなしをすることが求められます。
最初は上手くできなくても、練習して場数を踏めば社会人として通用する程度までこなせるようになります。
最後にこれからバイトをする人へ
塾講師の仕事は、時給も大変さもやりがいも他のバイトより高めです。
気軽にできるバイトではないかもしれませんが、本腰を入れて数年間やれば社会人になる前に上記で挙げたような様々なスキルを身に着けることができる、コスパのいい仕事だと思います。
こうした能力が身に付いていれば、社会人としても最初にかなりリードできるはずです。
真面目に仕事に取り組んでいれば、生徒と自分の両方の成長がダイレクトに感じられるはずです。頑張ってください!